このたび、和歌山県郷土伝統工芸品の棕櫚箒の展示と、棕櫚などを使った手作り体験ができる場所を、和歌山県紀美野町の廃校になった旧小学校にお借りする事になりました。
昨年2024年で私が棕櫚箒職人になって18年になったのを機に、これからは棕櫚箒を作るだけでなく、受け継いだ伝統的な棕櫚箒の事を伝える活動もしていきたいと考えるようになりました。

かつて唯一人、師匠の故・桑添勇雄さんだけが継承し2004年に和歌山県郷土伝統工芸品に指定された紀美野町動木平(きみのちょう とどろき ひら)地区の棕櫚箒については、これまで資料館などがなく地域の棕櫚箒の歴史や資料を知る事が出来る場所や機会がありませんでしたので、これまで集めた資料で「棕櫚箒の歴史資料展示室」を開設する事にしました。
手の痛みが出て棕櫚箒を作るのが難しい時でも、他の仕事や日常生活の動きは出来る事が多いので、そんな時はこの棕櫚箒の歴史資料展示室の公開日にしたり、クラフト工芸体験をしていただく機会を増やしていきたいと考えています。
(追記:2005年5月)展示室の準備を進める中で、師匠の箒工房・桑添勇雄商店を継いでいたご子息がお亡くなりになり、箒店は後継ぎがなく廃業されました。桑添勇雄さんがはじめた箒工房がなくなり、師匠から棕櫚箒を継承したのは私1人になり、伝えたいという気持ちがより一層強まりました。
【所在地】
旧 上神野小学校(きゅう かみこうの しょうがっこう) 校長室「棕櫚箒の歴史資料展示室」
〒640-1215 和歌山県海草郡紀美野町鎌滝107
(常時開いている施設ではありませんので、突然の訪問はご遠慮ください。)
※旧上神野小学校への入室規則として、校内に入るすべての人の「氏名・住所など連絡先の記入」が必要です。

【工芸体験 / しゅろの手しごと体験教室・ワークショップ開催予定、「棕櫚箒の歴史資料展示室」公開予定日など】
工芸体験:棕櫚などの自然素材を使った小物作り・手しごと体験。棕櫚たわし、棕櫚鍋敷き、棕櫚葉のハエたたき 棕櫚縄作りなど。
土日祝日に不定期開催予定・詳細は決まりしだい下記や予約専用ページ「予約 |しゅろの手しごと体験教室」やインスタグラム「しゅろの手しごと体験教室」に掲載。要事前予約・申込。
原則として、予約があった日時や、地域学習や手作り体験・オープンデーなどのイベント開催時のみ入室可。

部屋中央の白色の長机上にあるのが、体験用のシュロたわし巻き機。


【体験:棕櫚箒で掃き掃除】
紀美野町内の小中学校で子ども達が掃除に使っているのと同じ棕櫚皮箒(長柄箒・手箒)で、掃き掃除を体験できます。かつて桑添勇雄氏が学校掃除用に考案した棕櫚箒を元に、弟子の棕櫚箒製作舎が製作した箒です(学校掃除用の棕櫚箒は、同型の通常品の仕様とは多少異なります)。

【展示】
・ここ60年間に紀美野町の職人が製作した和歌山県郷土伝統工芸品「棕櫚箒」の実物展示。展示品のうち最も古い棕櫚箒は、1898年(明治38年)生まれの棕櫚箒職人が最晩年に製作した棕櫚本鬼毛箒(当時としても希少な内地産の棕櫚本鬼毛を使用)
・他の地域の棕櫚箒や箒
・様々な棕櫚製品
・「年表」形式で401年(古墳時代中期)以降の和箒・主に棕櫚箒の歴史と文献や絵画資料等のパネル展示(明治以降の年表パネル展示については製作中)






[棕櫚箒の展示]
・桑添勇雄氏の棕櫚鬼毛箒(長柄箒・手箒)
桑添勇雄:1928年(昭和3年)生まれ。2004年(平成16年)に和歌山県郷土伝統工芸品に「棕櫚箒」が指定された時、県内唯一人の棕櫚鬼毛箒の製作技術伝承者とされた和歌山県の名匠。


・前 貞一氏の棕櫚本鬼毛箒(1970年前後の製作と思われる長柄箒)
前 貞一:1898年(明治38年)生まれ。桑添勇雄氏とは近所で親戚関係でもある。棕櫚鬼毛箒専門で、随一の名人だったと後々まで語り継がれている。

・棕櫚箒製作舎の棕櫚箒
1976年(昭和51年)広島市生まれ、紀美野町在住。2006年に桑添勇雄氏に弟子入り、2012年独立。(棕櫚箒製作舎の箒の展示内容は随時変わります。)

・他の地域の棕櫚箒や箒
和歌山県紀美野町以外の日本各地で作られた棕櫚箒や、中国など外国製の棕櫚箒と様々な素材の箒の展示。


上画像は、中国などの外国製の棕櫚箒。右2本は桑添氏が保管していた、輸入が始まった当時の中国製の棕櫚長柄箒。昭和時代に、棕櫚産業に関わる海南市の複数の問屋が主導して、野上谷の棕櫚箒職人が技術指導をし、中国での棕櫚箒の生産・輸入がはじまった。
・棕櫚を使った民具などの展示
