【棕櫚箒のお手入れ・保管方法】

箒のお手入れ・保管方法イメージ画像

当店の棕櫚箒は、原料を吟味し伝統の技術で丹念に仕上げたもので、ご使用状況や箒の種類にもよりますが、大事に使えば数年から数十年と長くご利用いただける箒です。
こちらに、箒を長持ちさせるお手入れ・保管のコツを書きますので参考になさってください。

なお、棕櫚箒のお手入れ方法については、全国各地、それぞれの地方により方法が異なるようですので、当店では和歌山県郷土伝統工芸品として師匠の桑添勇雄さんや地域の方々に教わった、当地方に伝わる昔からの方法をご紹介し、おすすめしていきます。
当地域では、手入れが簡単で手間要らずな点も棕櫚箒の値打ちのひとつとされておりますので、何ら特別なことはなく、とても簡単ですのでご安心ください。
 

【棕櫚箒のご使用方法】

棕櫚箒の使い方については色々いわれておりますが、特別にむずかしく考えて掃く必要はありません。
あえて書くならば、箒は寝かすのではなく、立てて使います。
穂先を生かし、穂先が常に床面に当たるように、床を撫でるように軽く掃いてください。  

棕櫚箒は立てて掃きます

■間違った使い方の例

あまりに強く穂先を床に押し付けて、穂先が強く曲がるような使い方はおやめください。
力を入れても、かえって汚れは取れず、箒そのものを傷めてしまいかねません。
穂先が常に床面に当たるように、軽く掃いてください。

 

■片手箒(手箒)を使う際の注意点

片手箒(手箒)は片手で持ちます。掃くときは、手首を使って掃かないでください。
手首をかえすような使い方をすると手首に負担がかかります。
片手箒(手箒)は利き手で持ち、腕をまっすぐ伸ばし、腰を自然に曲げて穂先を床に付け、
肩を軸に大きく左右に動かすイメージで、腕を伸ばしたまま
穂先で床を撫でるように埃を掃き寄せてください。

片手箒の使い方

■新品の棕櫚皮箒から出る「棕櫚粉」について

棕櫚皮箒の特徴として、使い始めだけ箒の穂先から多少の棕櫚粉が出ます。
皮箒が新品のうちはご使用前に外などで穂先を払って粉を落としてから使います。
棕櫚粉について→詳しくはこちらの別ページをお読みください。

皮5玉手箒・特選(ヒノキ柄)画像「棕櫚皮箒(皮5玉手箒・特選)と原料の棕櫚皮画像」


【棕櫚箒を使った昔ながらの掃除方法】

元々、棕櫚箒は鬼毛箒も皮箒も畳専用のお座敷箒ですが、板間・フローリングの掃除にも適しています。
何年も使い古して穂先が磨り減った後は、土間や庭を掃く箒として再利用してください。
(鬼毛箒は数十年経ってもあまり劣化せずほとんど性質が変わらないのですが、棕櫚「皮箒」は鬼毛箒よりも繊維が細く早く劣化します。古くなった棕櫚「皮箒」の皮の部分の繊維が黒ずんだり、逆に白くなったり、繊維が切れ毛のようになって箒表面がバサバサしてきたら、皮箒の寿命です。)

昔から言われている箒の掃き方としては、部屋の風上から風下へ向かって掃く、
また畳や床板の目に沿って、あまりホコリをたてないよう、静かに撫でるように掃く、
というのが基本です。
掃除の前に、床に軽く湿ったお茶殻や、湿らせてちぎった新聞紙をまき、
部屋の高い所からハタキや荒神箒で掃除をはじめ、最後に床を掃くと、
埃が舞い上がりにくく効率よく掃除ができるといわれています。

ゴミを掃き寄せたら、ちりとりや古紙でとるか、そのまま外へ掃きだしていただいてもよいでしょう。
仕上げに固く絞った雑巾で床を拭き、掃除完了です。
(普段の軽い掃除の時は雑巾がけは省略して、箒で掃くだけでもよい)
 

【棕櫚箒の保管方法】

箒の寿命を最も左右するのは、保管方法ですが、難しいことはありません。
紫外線の当たらない風通しの良い涼しい場所に吊るしておくだけです。

棕櫚箒は吊るして保管

■重複しますが、保管方法をもう少し詳しくご説明します

ご使用にならないときは、毛先が床に接触しないように、必ず吊して保管してください。
直射日光の当たる場所や、一日のうちで温度・湿度の変化の激しい場所は、
箒の保管場所には向きません。
柄竹が割れたり、棕櫚繊維の劣化を早める場合があります。

箒を逆さまに(毛先を上に)して長期間立てかけたままにしたり、
逆に、箒の毛先を床につけたまま、長期間立てかけたままにしないでください。
どちらも箒穂先にくせがついたり広がったりして、箒の見た目だけでなく掃き心地も悪くします。

棕櫚箒を長持ちさせるうえで特に重要な事は、太陽の光・紫外線を避けることです。
直接日光の当たらない(日光の強い反射光・日光の強い間接光も当たらない)薄暗く、
火気のない、風通しの良い涼しい保管場所を選んでください。
紫外線は棕櫚繊維の劣化を早めますので、室内に飾る場合もご注意ください。

日当たりの良い場所と、そうでない場所に棕櫚皮箒を吊るして試したところ違いは歴然で、
日当たりの良い場所に吊るした皮箒は半年もたたないうちに、
数年使い古した皮箒のように繊維が劣化し、棕櫚の色も黒ずんでしまいました。
もう一方の皮箒にはほとんど変化は見られませんでした。
 

【棕櫚箒のお手入れ方法】

特別なお手入れは不要です。

棕櫚箒に綿埃や髪の毛がついているのが気になったら、
ゴミ箱の上や外で軽く振り払ったり、手でつまんで引っ張るとスッと簡単にとれます。
棕櫚箒はどんなに手入れを怠っても、
箒に綿埃や髪の毛がガチガチに絡み付いて取れない、なんてことにはなりません。
簡単にスッととれます。

もし繰り返し使用するうちに掃きぐせがついてしまった場合は、
直したい部分の穂先表面を、霧吹きでしっとりする程度に軽く湿らせ、
タワシや釘などを櫛代わりに使い繊維を伸ばし整え、
穂先を下にして吊るして完全に乾くまで自然乾燥させてください。
自然とくせが戻っていきます。

また、しゅろ繊維は自然素材ですから、呼吸しています。
急な気温上昇や湿度の低い環境では乾燥して、繊維のくせ・広がりがどうしても出ます。
適度な湿度になれば自然と元にもどります。

■温度・湿度の変化による毛先のハネや広がり(箒カバーのことなど)
→「温度・湿度の変化による毛先のハネや広がり」ブログ箒師のしごと(棕櫚箒製作舎ブログ)

 

【棕櫚箒の水洗いはしないでください】

よくいわれる「棕櫚箒の水洗い」は、しないでください。
(水回り用小箒は除く。小箒・荒神箒の煮沸消毒の方法については、このページの下の方に記載しています。)
特に鬼毛箒の丸洗いは厳禁です。
当地域では昔から、棕櫚座敷箒は絶対に水で濡らさない・濡れた場所も掃かないよう大切に扱うものとされており、
地域の方々に聞き込みをした限りでは「棕櫚座敷箒を水で洗うというのははじめて聞いた」という方ばかりでしたので、
師匠の桑添勇雄さんと同じく地域の伝統に従って、
当店の棕櫚箒に関しては水洗いはおすすめしません。

理由は、棕櫚座敷箒を穂先10〜15cm程だけでもバケツの水などに浸すと、
お客様のお宅で吊るして、箒の中まで完全に自然乾燥させるには
数日〜1週間以上かかるかもしれず、その間、掃き掃除ができず不便になりますし、
もし知らずに生乾きの箒を使えば、
湿った繊維に埃が吸着してかえって箒が汚れてしまうからです。
(霧吹きで軽く湿らせる程度なら、すぐに乾きます)

また、これまでも数件、水や湯で洗った結果、箒の質感が元の状態に戻らないなど、
何らかのトラブルが起きたというお問合せをいただいています。
通常、水に浸けたくらいでは何ら問題はないはずなのですが、
こういったお声がある以上、おすすめはできません。

ただし当地域でも、水で洗うわけではありませんが、
例外的に箒をバケツの水に浸すことはあります。
棕櫚箒を製作する時と、箒を立てかけ続けてしまった、など
当たり前の管理を怠って、穂先が曲がって強いクセがつき、吊るしておくだけではどうしてもなおらない場合に、
最終手段として、曲がった穂先を水に浸しておきます。
そして曲がりを直すように整えて干します。
 

【その他、棕櫚箒のお手入れ方法】

棕櫚荒神箒の煮沸消毒

■棕櫚荒神箒の煮沸消毒

→棕櫚荒神箒(小箒)の煮沸消毒については、こちらのページをご覧ください。
「棕櫚箒のお手入れ1-棕櫚荒神箒の煮沸消毒」ブログ箒師のしごと(棕櫚箒製作舎ブログ)


■温度・湿度の変化による毛先のハネや広がり(箒カバーのことなど)

→「温度・湿度の変化による毛先のハネや広がり」ブログ箒師のしごと(棕櫚箒製作舎ブログ)